はじめに
とある大阪オフ会についての、参加者それぞれの視点によるレポート集です。
左側のメニュー(スマホの場合は上部)から各レポートを選択してご覧ください。
初めて読む方は、まず「0. 前提知識」に目を通すことをお勧めします。
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第三者がこのレポを読むのに必要な前提知識を、おれ(ROUSHI)が紹介する。
とり雑2オフ会の流れ。
ムラコがいつもの調子で「クリヤ~! 付き合ってくれ~!」と絡んでおり、マライヤが「ほならオフ会すっか!」って言い出して決定。
クリヤの飯代はムラコが、マライヤの旅行費と飯代はバグくんが出してくれることが決まる(なぜ?)。
そのオフ会の参加者に、真っ先に手を上げたのがバゥママ。こいつはとり雑2には一切顔を出していない。なろう鯖のほうで挙手したらしい。
なので(なろう鯖を見ていない)おれ視点では、いきなりマライヤが「バゥママくんも参加する。同じ新幹線に乗って同じホテルに泊まるわ」と言い出した事になる。
この時点で地雷臭が漂っていたが、オモロイので黙ってニヤついていた。
オフ会をするにあたり、参加者間で「アスカガとクリヤの間で何があったのか?」を共通認識にする必要があると話題に上がる。
さすがに表でやるにはセンシティブすぎるので、専用鯖を作ってそこでやるという話になる(アスカガはこの鯖には不参加)。
結果として、この鯖がオフ会中の実況用鯖として使われることになる。
クリヤとアスカガに何があったのか説明間を得て、クリヤが「多重人格で、人格の一つに神がいて、自認は美形の中性で、会社ではうまく行ってないぼっちで、アスカガとはヤッていない」
という地雷情報が上がりだす。
このへんはみんな知っていたので「まぁそうだよねwwwwwww」という空気。
ムラコ「これと会ったら冷笑スイッチ入りそう」
マライヤ「絶対入れんなよ」
というやり取りがある中で、
マライヤ「あとバゥママくんもヤバくない? チン凸の気配あんだけど」
と話題に出す。
「今ごろ気づいたの?」「どう見てもヤバいでしょ」というリアクションが上がるなかで、
バグ「バゥママくんは別鯖でちん凸してBANされてるよ、あと100キロ超えのデブ」
太郎冠者「自分とボイチャして男だと分かってるはずなのに、やたらDMで好きって言われている」
というヤバい情報が上がりだす。
マライヤ「これと同じホテルなんだけど……死んだか?」
と絶望漂う流れ。おれは期待通りの展開でニコニコしていた。
こっからはマライヤ旅行記が詳しいのでそれを確認してほしい。
ざっと当日のバゥママエピソードを羅列すると、
こんな感じの人物。
ここまでの知識があれば旅行紀は問題なく楽しめると思う。
| バグ氏 | 金51,000円也 |
| 太郎冠者氏 | 金3,500円也 |
| ノンケミカル氏 | 金2,000円也 |
| しゃろりね氏 | 金10円也 |
| 新幹線・宿代 | 30,300円 |
| 電車代 | 5,922円 |
| ジンジャービア | 1,350円 |
| ほうじ茶 | 150円 |
| アイスクリーム二つ | 900円 |
| 焼肉 | 12,000円 |
| ミネラルウォーター | 150円 |
| たこ焼き | 1,200円 |
| コーヒーゼリー | 730円 |
| 抹茶ラテ | 660円 |
| 柿の葉寿司 | 1,839円 |
| 土産代 | 2,052円 |
| 身銭 | 732円 |
| 理容 | 8,998円 |
身綺麗にしておく必要があった。人に化けて肉を食うためである。カット、シェービング、眉カット、ヘッドスパ、それから、セット。私からは整髪料の香りがしていて、照明の抑えられた店内を重役のような顔で歩いていた。
「大阪旅行、楽しんできてくださいね」
理容師の言葉に心を涼しくしながら階段を下ると、外に太った目の細い男が立っていた。なるほどこいつか、と思えば、やはりそうだった。この顔を初めて見るのだ。向こうはそうと知っていて、やあ、と抱きついてきた。彼のワークマンのウインドブレーカーが、私のディーゼルのパーカーを押しつぶした。冬の乾いた風ににおいのしないことをありがたく思った。べたついた湿度に顔をしかめそうになったが、その盛り上がった肩を私は軽く叩いた。まだ警戒をしていなかったのだ。
出発前にコーヒーを飲もうという話になって、スターバックスに入った。
「ここはウチが出しますよ」
ここは素直にありがたく、チョコレートドーナツとカフェミストのトールをお願いした。運ばれてきたのはチョコレートドーナツではなくプレーンドーナツだった。親切から頂くお菓子は、たとえ間違っていても美味しいものである。私は彼に新幹線の切符を渡した。彼はテーブルに障害者手帳をポンと出した。それをカードケースにしているのである。
無事では済むまい、と思った。これは尋常ではない。
尋常ではないというのは、なにもその所有権の話ではなく、その扱い方の話である。障害者手帳はカードケースではないと思う。しかし考えても仕方がない。私は立て替えていた宿代と新幹線代を彼に求めた。
「ああ、そういうことかぁ」
彼の盛り上がった頬の肉が、小さな目を押し上げた。なんだか、怖かった。
「マライヤさん、またウチに勘違いをさせましたよ」
彼は新幹線代と宿代を、誰かが支払うと思い込んでいたらしいのだ。また、というのは、私が彼の理容代を出すのだと彼が思い込んでいた件である。あのときも、謝らされたのだ。
新幹線代や宿代を誰が出すのかと尋ねると、出資者であるとのことだった。なにかそういうシステムがあると思い込んでいたらしい。その先に人の影を見る態度ではなかった。しかしぶつくさ言いながらも、彼は言われたとおり三万一千円を支払ったので、私はホッとした。やくざの類いではないと思った。彼は脂肪の形にうねる短髪の下に、汗を掻いていた。この二月にである。私はなるべく穏やかな笑顔と柔らかな声を意識した。
「そうか、また勘違いをさせてしまったか。ごめんね。じゃあ、もうこの先勘違いが起きないように、整理しようか。この先なにか人に出してもらいそうなものはあるかな」
彼は、ううんと唸っていた。新幹線のホームで、私は彼にアイスクリームを買い与えることにした。いちご、と彼は言った。私は彼の望むものを買い与えた。
不安の多い東京出立である。しかし新幹線がホームに滑り込んできて、在来線よりもしめやかに、ゆっくりと開くホームドアに迎えられると、そんな気分も忘れることができた。先ほどじゃんけんで負けたので、彼が窓際になり、私は中央の席、左側は若い女性だった。なるべく話し声を小さくしようと思った。同行者はうまいうまいとアイスを食べている。私はノンケミカル氏から勧められたゲーテのイタリア旅行記を開き、古書から立ち上がる旅の匂いを嗅いでいた。それに当てられたのかもしれない。隣の女性がうとうととし始めた。そうして、その小さな頭をころんと私の肩に載せてきた。旅らしいことだと思った。私はちょっとした悪いことを思いつく。私は彼に言った。彼女の顔を映さないように注意させながらも、この一場面を同行者に撮影させたのである。共犯意識というのは、それなりに距離を縮めるものである。女性がまた目を覚ます。私も人間だから、そうなると少し申し訳ない気持ちにもなった。そしてまた、うとうととし始める。
「京都か新大阪であれば、起こしましょうか」
私が尋ねると、彼女は頬を染めて首を小さく振った。
「いえいえ、大丈夫です。その、私さっき、肩に頭を……すみません」
すると同行者が身を乗り出してきた。
「大丈夫ですよぉ。ほら、こんな感じで寝てたんですよぉ」
彼はにたにた笑いながら、先ほどの写真を彼女に見せた。意外に思われるかもしれないが、このとき私は彼を殺さなかったのである。新幹線を降りるとき、彼女にまた謝られた。私は罪人の気持ちで大阪の地を踏んだ。しかしなにも、悪いことばかりではない。
新大阪の改札を出ると、可憐な人が待っていた。フリルのついたカチューシャに、袖の大きなパーカー。可愛らしいリュックの社会的文脈を、私は知らない。しかしなによりも、しゃろりね氏は会話可能な人種に属していたのである。なによりもありがたいことだと思った。新大阪は呼吸のできる土地であった。同行者が彼に距離を詰めていく光景を多少不気味に思いながらも、私は三人連れであることに安心感を覚えて、彼が地下鉄の切符を買うのを待っていた。これからなんばに向かうのである。
「マライヤさん、これあげる」
しゃろりね氏から十円、渡された。大きな目が笑っていた。
「これなんの十円?」
という私の言葉を無視して、彼は改札をくぐった。なるほどこういう呼吸かと思った。生来、私はこういう呼吸をする人に勝ったことがない。勝つ必要がないとも思う。地下鉄では、同行者がほとんどしゃろりね氏に覆い被さっていた。乳首の浮いた小さすぎるシャツが、しゃろりね氏の目の前にあった。私は地獄よりも大阪の広告を眺める方を選んだ。
電車を降り、地上に出ると、ワークマンの巨漢と華奢な地雷系が街の人になった。私は肩で風を切って、夜の大阪を歩こうと思った。私にはお金がないのである。最初に書いたとおり、旅費を出してもらっている身である。であればこそ、逆説的に、堂々としていなければ申し訳ないと思った。彼らは私の罪悪感にお金を出したわけではない。私は彼らへの感謝と、それに勝る閃光を届けねばならないのだ。いちど間違って丸井に入り、それからようやく高島屋を見つけた。とうとう、合流である。ひとりびとりの印象を残したいと思う。
ゼフィガルド氏は、安定した市井の人であった。ある種の諦観を抱きつつも清潔な人というのは、心地よいものである。独特な声はボイスチャットそのままで、彼とはもう少し話せれば良かったと思う。彼は今回のメンバーの中で、きちんと働いていることが想像できる数少ないひとりである。
私が女性であったら、おそらくらみあむ氏を警戒していたであろう。パーマを当てているのかと思っていたが、天然なのだという。ひとつの道に秀でた人は、ある種の色気を抱くようになるものだけれど、彼はそれを利用するのがとても上手そうに見えた。
アカツキ氏は風のように中性的な人だった。細いラインのロングコートがとても似合っていて、ユニクロだと彼は言っていたけれど、もっと上等なものに私には見えた。おずおずと、しかし前向きに場を楽しもうとしている。彼は私のために四六判の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を持ってきてくれていた。私はそのお返しとして拙著を渡したのだが、楽しんでもらえれば嬉しいと思っている。
もっとも厚い安定感を見せていたのが、太郎冠者氏である。彼は正しくビジネスマンの顔をしていて、そういった人の優れた特性として、遊ぶこともきちんと知っている。遊ぶにあたり、塩系のさっぱりした顔は扱いやすい武器であったに違いない。いまその武器は、もっぱら正当な社交に用いられている様子だ。
村の子供氏には、数年前に出会ったことがある。大きく変わったわけではないけれども、管理職の風格を仕立ての良さそうなコートに纏わせていた。話の回し方が上手くなっているし、振る舞いのそこここに余裕が見えた。そんなことを彼に話すと、
「マライヤは白髪が増えたな」と言われた。
くりや氏は、こう言っては相済まないと思うけれど、意志薄弱な将棋の駒に似ていた。輪郭ではなく佇まいの話である。吹かれればどこへなと飛んで行くという危うさが、危うさと感じ取れないほどに、彼女はそこにいない感じがした。ひょっとすると、仮想世界にその身体があるのかもしれなかった。仮想世界で芝居じみたことを言い、現実では吹かれるままに吹かれてくれるのであれば、アスカガ氏に好かれ、別れた後に執着されるのも、ひどく頷ける話である。
正直、少しホッとしてもいた。間違いの起こりそうにないからである。楽しい食事会になりそうだと思った。私は村の子供氏に乾杯の挨拶を頼んだ。
「正直言って僕はアスカガを煽るためだけにここに来ました。みなさんしっかり食べて、楽しい夜にしましょう」
気持ちの良い挨拶である。彼は自分の悪意を隠さない。グラスがぶつかり合って、私は安心感をジンジャーエールで腹に流し込む。準高級、と佐倉氏は言っていたけれども、肉は大変美味かった。しかし味がどうのという話を求められていないことはわかっている。
場にいなければわからないのは、くりや氏のあの目である。彼はアスカガ氏とつきあった過去を、社交のために最大限に利用しようとしていた。アスカガ氏の非常識なエピソードについて語るとき、彼女の目は企んでいるのである。少しあごを引いて、視線は少し上に向ける。そして自分自身に、ほんの小さく頷きながら喋るのだ。その合間に、村の子供氏がくだらないことを挟むのが救いであった。
「もう関わらなければいいだけだから、大丈夫大丈夫」
などと言っていた私は、社交家としては三流である。笑い飛ばすことが下手なのだ。向こうの卓の話題も、気になってくる。
「ウチみたいなのと話してても、誰も楽しくないよねぇ」
聞くんじゃなかった。あれとホテルに帰るのである。焼肉が美味しいことだけを考えることにした。
この場を誰よりも楽しんでいたのは村の子供氏である。この場にいないアスカガ氏をスマホで煽りながら、肉を食い、酒を飲む。彼はこの開闢以来から存在する、野蛮で毒の強い娯楽に酔いしれていた。その様子からは、ふだんの気苦労すら読み取れる気がする。そういった意味でくりや氏は美味しい立場にいるとも言えたが、村の子供氏の邪悪な娯楽につけ込めるほどの巧者ではない。小さなあごにひたすら肉を詰め込んでいた。当然、私も負けずに食べた。遊びが下手な人間は食事を楽しめば良いのである。
良い夜であった、と思う。
太郎冠者氏に車でホテルまで送ってもらった。私は後部座席の同行者に気を遣いつつ、小説の話をすることができた。短い時間ではあったけれども、この先この人はもっと話せると、そんな予感がした。私はその間に、同行者のどうでもいい言葉に相づちを打っていた時間を正当化できない。チェックインを済ませると、再び車に乗せてもらい、二次会の店まで連れて行ってもらった。村の子供氏、らみあむ氏、しゃろりね氏、アカツキ氏の四人で先に始めているらしい。私はディスコードをチェックしつつ、同行者と店内に入った。
しゃろりね【なんかうすぎたねぇ暗い居酒屋でしょぼい寿司食ってる】
私はそれを見て、そこで寿司は食うまいと思った。そして寿司よりも食えないのがしゃろりね氏である。彼女はそれを現地では美味しいと言って食べ、らみあむ氏に同じ物を注文させていたのだ。
「てめえふざけんなよっ」
らみあむ氏の言葉に笑顔を返し、しゃろりね氏は手を振って帰って行った。私はこういう人に勝てたことがない。アカツキ氏もすぐに終電で、帰ってしまった。らみあむ氏とは以前から差し向かいで話を聞きたいと思っていた。事実、彼はドット絵についてのかなり面白い話をしてくれて、これは今回の旅の大きな満足のひとつになった。同行者は、誰も手をつけなかったお通しの、春雨の酢の物みたいなものを一皿ずつ掻き込んでいた。
私は終電ぎりぎりまで粘った。同行者とホテルが同室なのだ。しかしとうとう時間は来て、私は同行者をつれて電車に乗り、ホテルへ戻った。部屋に入り、ベッドに腰を下ろしたけれども、楽しい夕食を思い返すような気持ちでもなく、荷物を整理したり、かかった費用の計算をしたりしていた。同行者が、そんな私に問いかける。
「財布に、いくら残ってる?」
私は残金のほとんどを、ロビーにあるATMに入金することを決めた。部屋を出て、ロビーに下り、計算をまとめる。そして財布に残った現金と照合した。それが、信じられないことに、計算より多いのである。一九〇〇〇円、多く自分の手元にある。私は戦慄した。ディスコードを開いて、信頼できる人に相談をした。なんども計算を辿ってもらった。そこで村の子供氏が、参加者のサーバーに書き込んだ。
村の子供【焼肉代がなぜかはちゃめちゃに余ってるらしいので、出した金額書いて$301C。村の子供さん、二六〇〇〇円】
彼はくりや氏のぶんも出していた。書き込みが続く。
しゃろりね【ゼロ(佐倉おぢ+ 太郎おぢ)】
らみあむ【〇(キリタニさんから)】
彼らはそれぞれ、奢ってもらっているのだ。そして、
バゥママ【〇(途中から参加したので詳しい人は不明)】
尋常ではなかったのである。誰も彼に奢るなどという話はしていない。しかし彼から徴収するとなるとおかしなことになって、一九〇〇〇円から更に同行者が支払うべき一二〇〇〇円が増えて、三万一千円になってしまう。
あ。
私は勘と頭が悪い。同行者から受け取った旅費のことを忘れていたのである。私は安心して、しかし気も重たかった。部屋に戻り、同行者に話しかけた。
「焼肉代、誰に奢ってもらったの」
「ウチはあとから来たので出資者が」
彼は、今にも潰れそうな中小企業の社長みたいな顔をしていた。
「それは誰なの」
「わからないです」
なにか彼にわかっていることが、ひとつでもあっただろうか。
「あのね。俺はたまたま親切で出して頂いたけれど、基本はみんな自分で出してるからね。だから、出さなきゃいけないんだよ」
彼は一二〇〇〇円、私に差し出した。居たたまれない気がした。彼はこれまでの四三〇〇〇円を、出す予定なく出しているのである。仕事もないという話である。私はこっそり財布を枕の下に敷くと、ベッドに寝っ転がり、まんじりともせずに天井を見つめていた。やがて、いびきがきこえてきた。
尋常ではなかった。隣のベッドで道路工事が始まったのかと思った。ノイズキャンセリングイヤホンをつけたけれども、それを飛び越えて粘ついた音が鼓膜を叩く。私は大音量でブラウンノイズを再生して、なんとか眠ろうと努力した。スマートウォッチが高ストレスの警報を知らせてくる。ブラウンノイズに逃げたかった。これは地中の音である。どこまでも地球の奥深くへ埋もれていきたかった。チェックアウトは十一時である。十時半まで少しだけでも眠りたい……。
肩を、揺すられた。
「朝ですよ。モーニング食べに行きましょう」
時計を見ると、七時半である。ベッドサイドには銃も金槌もない。私はゆっくりと起き上がるしかなかった。彼は自分のスマホの画面を私に向けた。
「こんな顔で寝てましたよ」
私の寝ているときの顔が盗撮されていた。正直な話、殺しても良かったと思う。そして彼はまた、こんなことを言った。
「ウチはもっとマライヤさんに媚びた方がいいのかな。芥川賞とってくださいよ。そして箱根に連れて行ってください」
そこから、彼は怒濤の勢いで私に奢り始めた。モーニングも自分が出すと言い、その帰りに知らないうちにピザまんとお茶を買っていて、私によこす。私はモーニングのチーズトーストでいっぱいの腹に、ピザまんを無理矢理詰め込んだ。私は彼がカードケースにしている手帳のことを思った。難しいのだと思った。そして大阪城に登ろうという話になる。入場料が必要だ。ひとつ、咳払いをした。
「失礼でなければ、なんだけれど」
少しだけ、間を置いた。
「緑色の手帳を、持っていたよね」
頂いた資金は、大切に使わなければならない。
「あれを使うと、介護者も込みで大阪城にタダで入れるんだ」
「そうなんですねぇ。そうなんですよぉ。ウチ、実は障害者なんです」
大阪城でなにを観たのか、今どうも思い出せずにいる。明るい振りだけをしていた。最後、彼が土産物を買うと言ったので、私は待っていた。しばらくすると、彼は私に紙包みを渡してきた。私の妻への土産というのである。彼には本当に悪いけれど、なにか汚されたくないものが汚されるような、そんな気持ちになってしまった。土産とは、金箔のふられたカステラであった。私は少し安心した。妻はカステラを食べないからだ。
「ごめんね。うちの妻は食べないんだ。お義母さんにということでいいかな」
そういうことになった。それから、コーヒーゼリーも奢られそうになり、抹茶ラテも奢られそうになり、それをひとつひとつ断るのが苦痛だった。やがて日も傾き、新大阪。とうとうこの旅も終わる。長い旅であった。
新幹線のホームで、同行者が長い電話をしていた。それが終わると、私に言った。
「父親が肺炎で倒れたみたいです。ずっと咳をしてて、でも働きづめで」
彼の父親は大工だそうである。この寒い時期が、大工にとって鬼門であることを私はよく知っている。私の父も、また大工だからだ。帰りの新幹線が来た。私はもう、なんの音も聴きなくなくなった。
子細を語って、多少なりとも面白くなるのはここまでである。あとは当たり前に別れて、当たり前に帰途についた。旅には楽しいこともあったけれども、そこに砂金を見出すには、泥の沈殿を待つ期間を必要とするようである。
ともあれ、旅の資金を提供してくれた皆様に、心からの感謝を申し上げたい。旅で得たさまざまの楽しみは、却って忘却の中で芽吹くであろうことを予感している。今回関わったすべての人に、楽しい日々があることを願っている。
マライヤ
初めて参加するオフ会。
この日、私は寒さと退勤ラッシュを全力で回避すべく、三時頃には既に家を出発していた。緊張とワクワク感がせめぎ合ううちに各駅停車の列車はいつしか難波へたどり着き――まずそこで人の多さに圧倒された。
この日は祝日でもない、ただの平日のそれも午後四時前。学生はようやく授業が終わる頃だし、社会人はそもそもまだ仕事中のはず。なのに、駅は人でごった返していた。冬休み効果なんだろうかと思いつつ、地下道を通ってまずは高島屋へ。中に入るといかにも高級そうな店が並んでいたので、ちょっと居心地が悪かった。
そこでゼフィさんと合流したのだが、思ってたよりも平均的なタテヨコの大きさで内心拍子抜けしていた。もっと熊みたいなデカさの人が来ると思っていたので。(なお、これは後に発見されることになる。)
時間が有り余っていたのでまずはオタロードと呼ばれる場所を、ゼフィさんに紹介してもらいながら歩いていった。昔話を聞くのは面白かったし、私は如何せん話を振るのがまぁ下手なので正直助かった。ただ、カドショしかないので何だこのカスロードはと思ってはいた。
たどり着いたメロブで各々本を書き、時間が全然余ってるのでサンマルクカフェへ。ここで見つかったのがたこ焼き。メニューにもない、道中でそれらしいのを見なかったたこ焼きの抜け殻だった。メニューを探しても当たり前にヒットはせず、結局謎は深まるばかりだった。コーヒーとたこ焼きはさすがに食い合わせがゴミすぎるだろ。
その後やはり寒くなってきた道を通って再び高島屋へ。カフェインで各々腹下しと尿意を覚えて、六階ベビー用品コーナーのトイレへ。その後ムラコさんと合流。思ったよりも爽やかな人だった。盗撮されたのをとり雑かどっかに貼られてたのはびっくりしたけども。
その後はくりやくんを迎えに行ったムラコさんを見失い、ロレックスのカウンターと店の間で待機していた。買いもしないのに。
くりやさんの印象はまぁこの鯖で散々語ったので今更言うまでもない。この辺りはムラコさんの話以上のことはない。
そして。何より一番緊張感が走ったのが、新大阪組(しゃろりね&マラヤー&バゥママ)との合流だった。
これまた買いもしないのにロレックスの前で居座って待ち合わせをし――そこで、バゥママさんを見て瞬時に察した。
「あ、この人は知的持ってそうだな」
――と。
マライヤさんは例のフリー素材通りで、しゃろりねはパッと見すごい軽装に見えた。実際は裏起毛とかで暖かかったらしい。
小学校中学年っぽいバゥママさんをゼフィさんが引率の先生して抑えつつ、八階へ。予約確認したきり帰ってこないマライヤーを待つさなか、バゥママさんのことを警戒していた。
後ろから両肩に手を置かれて「はじめまして」は、彼が巨漢なこともあってびっくりした。前述の察しがここでだいぶ確信に変わっていた。
焼肉会はみんなの方が詳しく書けると思う。私はちゃんとコミュ障を発揮して、妖怪相槌だけ人間になってました。あと会計の時、いの一番に出たくせに段差につまづいたのは本当に恥。
解散後は二次会となったものの、ムラコさんが選んだのは薄暗いきねぇぼったくり酒場。串カツ一本300円とグラスで持ってこられた熱いお茶が印象的。
雑魚寝スパワールドを聞いてしゃろりねが離脱し、それから程なくしてバゥママ・マライヤチームが合流。私はタクシー料金の高さにひよってこの後退場した。
ここで起きたことは私も知らない。
帰りは難波駅で迷いかけて危うく終電を逃すところでした。
次に控える予定が食事である場合、街中で時間を消費する方法はそれほど多くないと俺は常々思っている。腹は減っているが、余計なものを入れるわけにもいかない。店のショーウィンドウや喫茶店の匂いも、ただの背景になる。
彼らも同じだったらしい。勢い勇んで早々に現地へ来たものの、完全に時間を持て余していた。
その結果として、ゼフィガルドさんやアカツキくんと合流したのが高島屋のベビー用品階という、独身男性たちには不釣り合いな場所だった。
色とりどりのランドセル小さな洋服が並ぶ売り場の端、エレベーターホールの椅子に二人は並んで座っていた。周囲の柔らかい色合いに対して、男が二人スマホを覗き込んでいる光景はやや異質だった。
外見の情報は持っていなかったが、声質から勝手に肥満体型を想像していたこと、そして「高島屋」でベビー用品を買うような品格を感じていなかったことから、ゼフィガルドさんはすぐにわかっ。なんとなく想像していた雰囲気が一致した。
一方でアカツキくんは意外だった。若い男性だろうと踏んでいたが、肩まで伸びた髪が光を拾い、中性的な印象を強めていた。良い意味で男性の輪郭が曖昧だった。
合流はしたものの、焼肉まではまだ時間がある。三人目の“ベビー用品階でスマホをいじる男”になろうかと思ったところで、くりやが仕事を早めに切り上げて向かってる旨をDiscordに書き込んだ。
見知らぬ土地でやや迷いながら彼女を迎えに向かう。正直に言えば、そのときの俺は少し浮ついていた。
アスカガがしきりに「ホテルに連れて行かれそうだったら守ってあげて」「自己肯定感クッソ低いくせにメチャクチャ可愛い」と吹聴していたほどの女だ。振られてから時間が経ってもなお執着している様子から、俺は勝手に“それ相応の価値”を想像していた。
だからこそ、出張で仕事をするだけなら不要なロングコートを持参し、整髪料で髪へと簡単な遊びを加えていた。
黄色いダウンコートはすぐに見つかった。
近づくにつれ、胸の高鳴りが少しずつ落ち着いていくのを感じた。
顔立ちそのものよりも、纏う空気が先に伝わってきた。
小さな顎とやや出た前歯。髪質は女性的だが、髪型は短く、装いにも“女性として整える”意志はあまり見えなかった。医学的に正しいかは分からないが、アデノイド顔貌という表現が近い気がした。
アカツキくんは良い意味で中性的だったが、くりやは悪い意味で中性的だった。
遠方の旅行先で「ここに来たら絶対に食べるべき。食べなかったら損」と勧められ、期待を膨らませて向かった店が「天下一品」だったときの気分に近い。嫌いではない。だが、事前の期待値が高すぎた。
もし本当に可愛かったなら、彼女が事前に行こうかと書き込んでいた買い物に付き合う提案をしたかもしれないし、合流したとしても隣を自然にキープしていたかもしれない。そう振る舞う程度には現金な人間である自覚はある。
現実は違った。
暇を潰すために向かった本屋ではほとんど彼女を放っていたと言っていい。欲しい本もない中で、アカツキくんと「この棚でバカが買いそうな本を選ぼう」と遊んでいた。くりやがスケッチブックとペンを買っていたことを知ったのは後になってからだ。
19時頃、マライヤ、しゃろりね、バゥママさんと合流した。
マライヤの髪や髭は以前より白くなっていたが、この日は生気に満ちていた。鬱病持ちという言葉との齟齬を感じつつも、陽気さが地の気質なのだろう、初対面が多い場でも会話を回していた。これは俺にも当てはまることではあるのだが、集団の中で広く認知しているペルソナを持っていることで振舞が楽になる作用もあったのだろう。
黒いマスクをしたしゃろりねは、男の娘風俗に在籍していた過去を持ち、女装をしていることもあって外見を飾ることに慣れている様子だった。目元しか見えないが、化粧と所作で既に女性感でくりやを上回っているように見えた。
消去法でわかったのがバゥママさんだ。巨漢だった。マライヤよりさらに一回り、いや二回り大きい。首元は脂肪で埋まりかけ、真冬にもかかわらずアウターとしてのウインドブレーカーの下はピッチピチのインナーの上に薄い下着を重ねているだけだった。インナーの柄は魚の皮のようだった。挨拶代わりに求められたハグは正直きつかった。
席決めの時点ではくりやに“価値”を見出していたので隣を強く希望していたが、実際にはアスカガ煽りがしやすい位置という意味しか持たなくなっていた。
焼肉屋は「準高級」と聞いていたが、俺には十分に高級だった。仕切りを外した二卓一部屋で、隣とは2、3メートル離れている。その距離は食事の場では大きい。焼肉屋に入ってから合流したらみあむと太郎さんとはこの場では話せなかった。
こちらの卓は、俺が梅酒を二杯入れて上機嫌になり、アスカガ煽りを画策する卓だった。くりやの了承を得て2ショットの写真を撮り、肉を食べさせてもらう動画を撮り、かつてアスカガがペアリングを贈ったのに被せてベアリングで作られた指輪をプレゼントする動画まで撮っては送った。ワンチャンを狙う気はなく、自分が楽しむためだけの行為だった。
安全圏で酒を飲み、肉を食い、共通のいけすかないやつを話題にして笑う。太古から行われている原始的な愉悦がそこにはあった。
一次会の後、くりやを返してさぁどうしようと話し込む前にバゥママからサプライズがあった。
「ハッピーバレンタイン」と宣いながら彼は全員にチョコレート菓子を配っていた。小袋一つ程度であればいいのだが、800円程度しそうな箱物だった。2026年のバレンタインに貰ったものが唯一これになる可能性が生まれた事実がとても嫌だった。それに、単純にやや大きくて邪魔くさい。
二次会の店選びはどちらかというと失敗だった。
後にらみあむと簡易宿泊所扱いするスパワールドに近く、遅くまでやっていそうで、もう飯はいらないのでとりあえず場所代としての安い酒が提供されそうな店だからというだけで選んだ。条件は満たしていたが質は低い。ただ、この場は一次会の延長というより、終わりを先延ばしにするための時間だったので大きな問題ではなかったと個人的には思う。
一次会が終わるのが遅かったことと、移動時間等があったことも重なり、二次会はさほど話し込むことなく終わった。バゥママさんがお通しの酢の物をすするマシーンになっていてあまり会話に入ってこようとしなかったのはとても良かった。
それから俺とらみあむは事前に計画していた通り、スパワールドで一夜を明かした。それまで行ったことのあるスパ銭を大きく上回る規模で、多種多様な風呂があるのに不釣り合いに料金が安かった。
翌朝、マックで簡単に朝食を済ませ、時間を潰すために動物園へ向かった。改修工事中の園内で、とある展示場には本来いるべき動物ではなく測量中のおじいちゃんが1人、気だるそうに座っていた。それを目にして「あ、ヒトだ」と呟いたら、それを聞いたらみあむが大笑いしていた。
らみあむが異様に動物を見つける能力に乏しかったのが印象に残っている。じっとしている生き物を見つけるのに、彼はとても時間がかかっていた。保護色の重要性を考えさせられる体験だった。
解散後、休憩と充電等を兼ねて入店した漫画喫茶で整髪し、メガネからコンタクトへ変え、Twitterの知り合いとのオフへ向かった。
女性だ。
くりやとの対比のためにあえて書く。
この方とは初めてではなく、ちょいちょい会っている。今回で4回目だろうか。たまに会う分には良い人として認識されているようだ。「距離があるからな~」と、付き合うかどうかの土俵に上げるに至らないとはっきり明言されているので、くりやの時とは違った意味で俺の"スイッチ"が入っていない。
彼女は女性としてきちんと装っていた。アイロンのかかった髪、丁寧な化粧、寒い中でも肩や脚をを出す装い。身だしなみを整える意志が明確だった。
酒が飲めるならある程度何でもいいらしいので、俺とも飲んでくれると言った関係である。今後どうなるという展望はない。実際に終電より少し前に切りのいいタイミングで返したため、酒を飲んで喋って、飲食代をもったことのサービスとしてちょっと手を繋いで帰った以上は何もなかった。
それでも、やはり女性感のある女性と飲むのは何か欠乏しているものを補うようで気分が良かったし、焼肉代よりもやや多い程度に散財しても惜しい気持ちは湧いていない。
村の子供さんに必要なのはやっぱり飢えや渇きを満たせる、女性との交流なのだなぁとくりやとの対比で彼女から感じた。
ちょっと公開場所を選ぶ内容なので、これは裏感想編として上げる物とする。ちなみにへらつき君との会合に関しては個人部屋に上げている物と相違ないので省略させていただく。
で、肝心の焼肉編。と言うか、合流地点の感想を述べて行くとしよう。
……と言うか、ほぼ特定の個人を狙い撃ちにする様な内容になるので。該当者の名前は上げない様にする。
まず、他のメンバーと比較して異様にテンションが高い。
後、体格と声がデカいので周りの目線が非常に気になる。
ハグされたのは別に構わないのだが、正直体格が良く、何をするか分からない怖さがちょっとあった。
急にハンドジェスチャーをし始めて素っ頓狂なことを言いだすので、警備員辺りから何か言われるんじゃないかと内心ハラハラしていた。
この感覚は覚えがある、認知症を患った伯母だ。
納骨堂のロッカーを勝手に開ける彼女を止めたり、面識のない人間に絡みに言ったりぬいぐるみを押し付けていたアレだ。
ただ、問題があるとすれば。該当者は体格がかなり良い。正直暴れ出したら止められない。
後、着ている服がピチピチなのが気になった。
目的の階に着いた後は幹事が予約の確認をして来ると言ったので、心配だったので一緒について行く。
と言うのは建前で、ちょっと距離を取りたかったのが本音だった。
予約はキッチリできていたので、報告の為に一旦皆の元に戻って相談して、皆で一緒に入ろうということになる。
そのことを幹事に伝えるべく一旦戻るが、肝心の彼の姿がない。店員さんに聞いた所、もう入ったと聞いたので席に案内して貰う。
一言欲しかった。
相談していた通りの席に座り、注文を取りに来た店員の女性に『綺麗っすね~~!』といきなり声を掛ける該当者がいたので、正直戸惑った。
隣の席に座った参加者もテンションが低いので具合が悪いのかな? と思ったが、ちゃんと話を聞けばそれはそうもなる。と思った。
察しが悪くて申し訳ない。
兎に角、この焼肉の時は該当者の挙動に注目していた。正直、部屋の入口側にいたのが気になったし、やたらと自分のリュックの場所を移動させたりと言う挙動が気になった。
だが、また店員さんに変な声を掛けたり、セクハラまがいなことをして叩き出されたりしないだろうかと言う懸念が常にあった。
焼肉自体は美味な物で。ここら辺はサクサク焼いてくれる参加者がいて助かった。焼いている間、全員がスマホを弄っているというのが珍妙と言うか。
いや、実況や報告があるから仕方ないにせよ会話がねぇ~~! と言う、状況が耐え難いというか勝手に『アレ? 怒っている?』と思っていたので、とにかく話さねばとなった。
正直、この時。最年長の参加者が受け答えしてくれて滅茶苦茶助かったし、隣の席の参加者もポツポツ反応してくれたのが嬉しかった。
もちろん、該当者も反応してくれるし、特定の話題をしている間は変なことはしないので暇を与えないことが大事なのかと思った。
が、そんなこともなく。男性店員に無反応なだけで女性には反応する辺り、そう言う物らしい。世にも恐ろしいスタッフガチャだ。
加えて、何故か急に自虐を始めたりと酒を飲んでいるハズなのにキチンとまともな参加者から是正されたりと。本当に何をするか分からない恐怖が伴っている。
さて。その注意が利いたのか、後半になってからはめっきり喋らなくなって、該当者を除いた3人で話をしている感じに(私が一方的に喋っているだけだが)
ここら辺の楽しい話は露出できる範囲なので個人部屋に貼っています。
辛かったのはコースメニューが全て出て来た後のことである。
なんたって、焼肉を焼くという作業で時間を潰せない。加えて、あまり量が多くなかったので二重の意味で胃が苦しめられることになる。
隣の卓ではどんな話をしているのかなぁと言うのが気になりつつ。とにかく喋っていた。
向うは楽しいのかな。村子さん、多分面白い話しているだろうなと思いつつ。割とすぐに時間は来た。
楽しかったという気持ちもあるが、大きいのはホッとしたという安堵だった。特に忘れられないのが天王寺駅に移動中のことである。
「ゼフィさん。今日は助かった」
楽しかった。でも、お疲れ様。でもなく、助かった。と労いの言葉を掛けられるオフ会は流石に始めてだった。
その後、二次会が開かれたようだが私は真っすぐに家に帰った。
ただ、ログを見ても苦労が偲ばれる文章がならぶ辺り。今回のオフ会はある意味、な鯖らしいものだったと言えるかもしれない。
前置き。個人の感想です。攻撃的な意図はありません。前置き終わり。
オフ会当日、昼間に人と会う予定があり割と早い時間から大阪に来ていた。寝過ごさないようにしていたのであまり眠れず、カフェインカフェインしている謎の飲み物だけ飲んでいざ大阪へ。
昼間にあった人と解散後、クッソ眠かったのでカスみたいなタイ式マッサージ屋へ。どうでもいいけど片言で値段伝えられるの怖すぎるよな。安かったけど。
10分前につけば問題ないかと19時10分まで仮眠のつもりでマッサージを受けていた。途中で怒涛の通知音が聞こえたのでまどろみから完全覚醒。あの馬鹿ども予定前倒ししたのか?と思った。そんなわけないよな。
そんなわけだった。マジで全員不幸になってくれないかな。
急いで焼き肉屋まで向かい、入り口に来た時ニコニコ顔のむらこが俺を呼んでいた。殴りたいね。よくみたらこちらの席はほぼ空いてない。らみあむくんはあっちだよ、と少し離れた席を指さされる。なんだよ離れた席かいなつまんね~と思っていたが、こっちの人たちと話せばいいかと切り替えようとして、振り返ったときに見た顔ですべてを忘れた。
少し話が変わるが、自分は人を判断する能力にたけている自負が少しある。声と話し方を聴けばある程度の社会性から能力が想定できるし、姿を見れば危険度がわかる。たいていの人はそうだろと思うかもしれないが、そのうえでこの面において優れている自覚が俺にはある。
振り返って見えた、右側手前の席の大男は別にそんなの関係なく万人が見てこいつはダメだろと思うだろうけどね。
なんだよその乳首丸出しぴちぴちtシャツ。なんだよその銀のネックレス。やくざか?そうじゃなけりゃ異常者だよ。頼むからこの場の全員分の金払って帰ってくれと思った。
ほかの二人は特に悪印象はない。太郎さんは俺よりよほどまともな社会人だろうなと思ったし、ゼフィさんはいい人なんだろうなと思った。でもしゃべり方は界王様が早口で喋ってるみたいで面白かった。
しかし俺も25歳。成人してから5年もたっている。一目で判断して決めつけるのはダメだろう。話してから判断しよう。
そう思ったとき目の前のいかれデブが店員さんに「おねえさんかわいいねぇ!」と言い放った。
死んでくれねえかな~。俺はそう思いながらすべてをあきらめ視線をテーブルに落とし、意識の半分を消した。50%意識を消すことによって不快度も50%軽減されるのだ。つまりそのあと「オッ近くで見たらもっときれい」と言っていたドぐされデブに言った「やめなさいよ」という言葉は半分無意識に出ているということである。年上にこんなこと言いたくないし言わせないでくれ頼むから。
肉を焼けばいい。肉を焼いていれば会話はいらないから。俺は肉を焼いた。
目の前のごみが視界に入ると食欲がダウンすることを除けば肉は本当にうまかった。キリタニさんありがとうございます。
ただ空気は最悪。ごみは俺に注意されたからか落ち込んでるし、ゼフィさんは皆が怒っていると思ってるのか早口で喋り続けるし、太郎さんはアルカイックスマイル。オフ会には何度か参加してきたがここまでひどい空気は初めてだし、今後最低を更新しないでほしい。
会話内容とか半分も覚えてない。途中から意識が8割くらい消えてたからだ。肉を焼いていたし、肉を焼いて食うこと以外はしなかった。シャトーブリアンとクッパ本当にうまかったね。
なんやかんやで焼肉も終わり、解散の空気が流れ始める。会計時にアカツキ君と話してえらく中世的な容姿に驚いた。村子もやたら元気だったし、しゃろりねはいつも通りだった。マライヤは想像より優しそうで、くりやくんはどうでもいい。マジで記憶にない。焼き肉屋でこの人たちと会話できた可能性を思うとやるせなかった。みんな思い思いに散ろうとする。
いやこんなところで終われないけど。
必死だった。初めて自分から二次会を提案した。こんなことで俺の自発性を試すなと神にキレた。
説得の甲斐あって二次会決定。やっぴー。
二次会に行くメンバーで楽しく会話しながら、店を探す。適当な店に入り、いや本当に適当な店だったが地獄よりましなのでどうでもよかった。
ここはマジで楽しかった。しゃろりねに騙されてちょっと微妙な寿司を食わされたこと以外は全部よかった。会話に花が咲き乱れていた。
どうやらマライヤも合流するらしく、テンションも上がる。二人来るらしく、あともう一人が誰かに思い当たりテンションが下がる。
なるほどね。俺は決意した。ごみに言葉を発させないと。
ひたすらドット絵の話をした。なぜならこの話は専門性が高いから。マライヤはこういう話が好きだし、むらこは後からいくらでも話せるからいまはいい。とにかく奴を封殺する。それが俺の使命だった。
そしてカスを引き連れてマライヤは帰った。やっぴー。また今度ちゃんと話そうね。
むらことスパワに行って寝て、翌日動物園に行った。ひたすら悪口で盛り上がった。ここが今年一面白かったから全部いいよ。内容は大体この旅行記と変わらないから割愛。
こんなぼろくそに書いてるけどマジで楽しかったです。重ね重ねキリタニさんありがとう。マライヤも開催してくれてありがとね。でもあの席順は許さないけど。
私は同好の士と話をした事がない。
それは小説というものを書き出したのが働きだしてからと言うのもあるし、SNSなどのコミュニティに明るくないというのもあるだろう。
コメント欄で稚作を読んでくれた人と関わるのも何だか気恥しさもあり、今まで誰とも小説について話す事がなかった。
なので、ひょんな事から参加したdiscordというサービスは私にとって新鮮な出会いの場だ。
飽き性な私にとって半年も続くのは珍しいことであり、グダグダと小説を書き続ける原動力のひとつになっていると思う。
もしかしたら、これが何のかんのと問題がありつつもSNSがなくならない理由なのかもしれない。
案外、人は寂しがり屋なのだろう。
少なくとも私はそうだ。
そんな私がオフ会の話を聞けば参加方向に意識が傾くのは当然だと思う。
最初はいつものノリで。
気付けば計画が具体的になっていった。
切っ掛けを作ってくれたムラコさん(もしくはくりやさん)そしてマライヤさんには感謝しかない。
しかし、開催日が近付くにつれて懸念が出て来た。
バゥママさんである。
彼はな鯖に入った当初に知り合った人だ。
色々と話し掛けてくれる人なのだが、今ひとつ距離感が独特な人である。
彼の近視眼的な傾向や、感情的になりやすさは摩擦を生むだろう。
しかし、同好の士でもある。
彼自身に悪気はないのはよく分かってる。
それが分かる程度には付き合いもできてしまった。
――しかし、同時に期待もしていた。
「きっと何か面白い事が起こりそう」
聞けば彼はウッカリはしつつも、何だかんだと面倒見の良いマライヤさんとセットで来るらしい。
それなりに笑えるトラブルが起こりつつ、そこまで後味の悪くない何かが起こりそう。
そんな期待を感じずにはいられなかった。
当日はバゥママさんのドアップから始まった。
たまたま扉の前にバゥママさんが控えていたのだ。
挨拶もそこそこに彼の横に座らされる。
予想通りであった。
笑顔を固定し、相槌を打つ。
少し引き気味なのは気にしない。
それが伝わるならむしろ僥倖だ。
助かったのはゼフィさんの存在だ。
コミュニケーションは苦手な様子だったが、同時に思っていた通り彼は紳士だ。
最初は自分が誰だと思う? と声を掛けてくれ、創作についての話を振ってくれる。
そして何より、私の横に座る彼の存在が伝わっている。
その確信が私にはあった。
ちなみに、定時に来たらみあむさんは早々に状況を察知し我関せずのスタイルだ。
ゼフィさんの出した話題に乗り、彼の意識を周りに向けさせない様にする。
これしかないと思った。
正直、商業の世界の先輩であるマライヤさんと話がしたかった。
ムラコさんの悪ふざけはどうなるのかも見たかった。
同じ夜の世界にいた事があるシャロさんと話したり、実はガンプラが好きなのだとヘラツキさんと話たかった思いはある。
しかし、着いた卓をどうにかせねばならない。
大学時代のハズレを引いた合コンを思い出す。
第一目的の完遂が困難なのであれば、後は卒なくこなし、終わった後で愚痴を言い合わねばならない。
らみあむさんに無視はヒデーよと笑って文句を言い、ゼフィさんと俺達頑張ったよねと健闘を称え合うのだ。
バゥママさんが卓を超えてマライヤさんに絡んだり、
店員さんに絡んだりもあった。
時に心が折れてスマホを見る時もあった。
しかし、私も何だかんだと楽しんだのだろう。
時間は思ったより早く過ぎた。
全員で別れを言って解散する際、くりやさんが一人足早に帰る所が印象的だった。
まぁ彼女には彼女なりの世界があるのだろう。
マライヤさんとバゥママさんをホテル経由で二次会に送っていく時に少し話せたのは僥倖だった。
何せ商業の先輩との会話だ。
個人的に少し似た様な所を感じていたのもあり、天王寺や難波周辺の少しディープな所を案内したかったのだが、時間がなかったのが悔やまれた。
バゥママさんの事は意識の外だった。
この歳になっても新しい事に触れるのは楽しい。
また機会があれば参加したいと思う。
プレイリスト「な」からINTERNET OVERDOSEを再生して、それから似たような雰囲気の曲が数回繰り返されたあと、新大阪駅への到着を告げるアナウンスが、ご機嫌な電子音の向こうにかすかに聞こえた。
これから、二人の男と会うことになっている。
片方は文藝賞を賜るほどの才覚を持ちながら、東京から大阪に至るまでの旅費の全てを他人に出させる、まっこと文豪然甚だしい男だった。歩く様や顔つきからも、その堂々たるやを伺うことができた。この男をマライヤという。
もう片方については、正直、誰だかわからなかった。
バゥママ。という名前だけを聞いていて、どんな見た目なのか、なにをしている人なのか、一切の情報がなかった。だが、事前に女関係でトラブルを起こしていると聞いたから、きっと、そういうトラブルを起こせぐらいの見た目なんだろう、と勝手に想像していた。
だが、実際に現れたのは、私のかつての古巣においてよく見かけた手合だった。
(逆アナルとか好きそうだなぁ)
ひと目見て、そう思った。
毛だらけのだらしないケツを晒しておんおん喘ぐのは、いつだって、こういう男だよなぁ。と思った。なんとなく、そういうのがわかるのだ。
彼は私を見つける前から、見つける前から、頭の上に両手を上げてふらふらと揺らしていた。うさみみを表現しているつもりなのだろう。なぜなら、私がうさみみのカチューシャをつけて臨んでいたからである。
ああ、そういう感じの人ね。
私は、誰かを見た時、そういう感じと、そういう感じではない二つに分類する癖がある。バゥママという男は、間違いなく、そういう感じの人だった。
「こんばんは」
うさみみカチューシャなんて、新大阪なんてお高く止まった場所においては浮いてしょうがないであろうものを身に着けているというのに、二人は私を見つけられなかった。
だから、しょうがなく、私から向かっていって、挨拶をした。すぐ後ろに行くまで私が見えていない様子だった。
「こんばんわぁ」
マライヤ氏も挨拶してくれたが、ほぼ同時に口を開いたバゥママ氏のおかげで、彼の声は聞こえなかった。代わりに、バゥママ氏の妙に甲高い猫なで声が強烈に印象に残った。
そういう感じだなぁ……と思った。
これから始まる食事のあれこれを連想させる脂の乗った顔でこちらを見つめ、初対面とは思えないような声色で、選ばず言えば馴れ馴れしく接してくる。そういう感じの人は、いつも、こうなんだ。
だからといって、別に嫌ったりはしなかった。むしろ、こういう人ってこうだよなぁ、と私の人間カテゴライズ眼の正しさを補強してくれるから、彼の存在は自信に繋がった。
挨拶もそこそこに、私たちは新大阪を出発した。
目指すはなんば。大阪随一の繁華街にして、今回の集合場所。
何度も往復しているから、私にとっては、特段、難しいことはなかった。ゆえにこそ、私は二人と話すことに集中できた。
途中、服装の話になった。どうやら、マライヤ氏は、密かに私のことを楽しみにしていたらしい。このために下に厚着して夏用の服を着て来たかいがあるというものだ。
互いの服装について言及し合って、やがてバゥママ氏の番が回ってきた。彼が上着を脱いで、その乳首の浮き出たインナーが目の前であらわになった。
太った男の乳首なんてものは見慣れているし、その味も知っているものだから、別に、どうとも思わなかった。でも、この季節にその格好をして、それを疑問に思っていない様子なのは、なるほど、さすがはそういう感じだなぁ、と思った。
なんば駅について、集合場所に至るまでは、特に面白いことは起きなかった。
でもひとつだけ、バゥママ氏が、交差点で「尼崎!」と叫んだことがあった。
「尼崎がどうしたの」
私が問うと、彼は「本当に書いてるんだ!」と嬉しそうにしていた。追って聞くと、ダウンタウンがよくネタにしているからだとかなんとか話してくれた。私は、現役時代の私を呼んだ。ところで、この集まりは小説を嗜む連中のそれなのだけれど、この男が日本語を操って叙情を連ねる様子を、私は想像できなかった。
少し歩いてから、私たちは全員と合流した。それぞれの印象を思い出してみる。マライヤ氏とバゥママ氏は既に会っているから、残りの人だけ。
むらこ、こと村の子供氏は、ネット上の振る舞いと一番差のある男だった。口を閉じて座っている分には、とても知的で優しそうな人だった。とはいえ、口を開いても知的な雰囲気は感じた。彼は間違いなく、そういう感じではない方の、まともな人間だった。あれと言えばそれと察して理解してくれる、会話のストレスが少ない男だった。
アカツキ氏は、細身の大学生を想像していた。おおむね、その通りだった。髪の毛が私よりもキレイだった。一体どういう了見かと憤る気持ちを抑えて、髪の毛キレイだね、と言った。その時の私は、彼のくっきりと刻まれた二重に釘づけだった。私の欲しいものを、彼は二つ、持っていた。
太郎冠者氏は、私の食事代を負担してくれているという情報だけで、とても輝いて見えた。それを抜きにしても、とても社会人らしい風貌だった。彼ならばきっと、上本町の真面目な空気漂うオフィス街にも容易く馴染めるだろう、そう思わせる雰囲気があった。
ゼフィガルド氏は、以前に声を聞いたことがある。とても低くて、頼りがいのある声色だった。見た目も、その声の通りだった。大柄で存在感があり、彼が笑うと安心する。言葉に詰まったとき、彼の方を見れば助けてくれそうな感じがした。
らみあむ氏は、もう何度も顔を合わせているから、特に思うこともなかった。いつも通りのつまんなそうな顔をしていた。
そして残る最後の一人。今回の集まりにおいて、ただ一人、生物学的に女として産まれた人間がいる。
その名はくりや氏。私が、密かにその対面を今か今かと心待ちにしていた女である。
彼女は、顔だけ見れば、そこらによくいる普通の女だった。女装の風俗店では星が3つ付きそうな感じだった。姿形だけでは、その背後に潜むあれこれを想像することはできなかった。多重人格を気取る自分を美人だと思っている自認中性の女――そんな、ややこしい人間には見えなかった。
食事会が進むにつれて、私のくりや氏に対する疑念はどんどん深まっていった。
つまり、ネット上における多重人格だとか性自認だとか、そういう振る舞いは、すべて嘘っぱちであり、厨二病とかキャラ付けとかの類なんじゃないかという疑いである。
なぜなら、話せば話すほど、見れば見るほど、くりや氏は女でしかなく、確固たる一つの自分自身を持っているようにしか見えなかったからだ。
「それで、あいつがホテルで、まぁ、そういう行為? で、それで――」
淡々と自分の不幸話を語る彼女の顔や目つきは、それまで散々、飽き飽きするほどに見てきた、いわゆる”のぼせた女”と全く同じだった。
人生で初めて男絡みの厄介事に遭遇して舞い上がってしまって、それを嬉々として周囲に話す。なるほど、非常に女らしい女だ。私は確信した。それを笑い話としてではなく、楽しいはずの食事会で、まるでカウンセリングでも受けているかのような真剣な面持ちで、深刻に話す様からも、私は”女”を感じていた。
食事会は、それらも含めて、とても楽しかった。例のくりや氏の元彼がリアルタイムで反応してくれるものだから、これに勝る娯楽はない。ただでさえ美味い肉が、それらの冷笑的で悪趣味な嗜みによって完成されていた。
数時間経って、いよいよ楽しい夜も終わりに差し掛かり、私の見ていない知らないところで会計が済まされたあと。すっかり人の消えた百貨店の最上階で、私たちは解散の挨拶を迎えた。
一銭も出していない男が聞こえの良い締めの言葉を言ってくれて、場は良い感じに終わった。
その直後、ここでまた、息を潜めていたバゥママ氏が最後に爪痕をと言わんばかりに切り出した。
「バレンタインなので。皆さんにこれを」
そう言って、彼はなんだか見た目お高そうなチョコレートを全員に配ってくれた。素直に嬉しかったし、とても美味しかったが、荷物を増やさないで欲しい面もあった。とはいえ、お気遣いはありがたかった。同時に、そういう感じの人って妙に気前が良いよな、と思った。現役の頃も、やたらと差し入れやらチップやらをくれるのは、そういう感じの人だった。やはりな――私はまた、自信がついた。
解散後。私たちは一部の面々だけで二次会へ行く運びになった。結局、私はすぐに帰ってしまったのだが、老けたスラム街にある薄暗くて汚くて臭い居酒屋で食う寿司は、まるで東南アジアのような趣があって、なかなかに味わい深かった。
その二次会へ行く直前。
なんば駅で解散した、すぐあとのこと。二次会の場所へ向かう私たちの前を、くりや氏が通り過ぎた。特徴的な黄色い上着を着ていたから、遠目からでもわかった。
これはまた少しだけ話をするんだろうな。私はそう思って、頭の中の話の引き出しを乱暴に開けた。だが、彼女はスマホだけを見つめて、こちらには一瞥もくれず、去っていった。冷たい彼女の背中がエスカレーターを昇っていった。
それを見送りながら、私は思った――ああ、そういう感じかぁ。
帰り道。
私はくりや氏を思い出しながら、YoutubeMusicでチルドレンレコードを再生した。